ホーチミンを旅行する上で絶対に立ち寄り、手を合わせるべき場所がある。
美味いと評判のフォーを食べるより、ベンタイン市場で偽物のTシャツの値切り交渉をするより、ベトナム戦争証跡博物館でアメリカ人たちと一緒に「戦争ってよくないなー」なんて感情に浸るより、だ。
その場所は・・・
「ティック・クアン・ドック祠廟(しびょう)」
ティック・クアン・ドック師というベトナムの僧侶をまつった場所だ。
名前は知らなくとも、この写真を目にしたことのある人は多いはずだ。
彼はまだ南北にベトナムが分かれて、戦争していた時代の南ベトナム側の僧侶だった。南ベトナム政府はアメリカにあやつられた状態で、仏教徒を弾圧しており、ティック・クアン・ドック師は弾圧に抗議するため焼身自殺をした。
この「尊い抗議」がきっかけとなって、南ベトナム政府は国内外からは反発を買うことになり軍事クーデターへと発展する。
その後、アメリカはベトナム戦争から撤退し、アメリカの後ろ盾を失った南ベトナムは北ベトナムに負けベトナムは統一される。
もちろんティック・クアン・ドック師の抗議だけで世界を変えた訳ではないが、その重要な要因の一つとなった。
一人の僧侶の強い思いが、人々に伝搬し、世界を変えた。
そんな尊い僧侶がまつられている祠(ほこら)がホーチミンにあるなら1時間でも30分でもいい。時間を割いて、手を合わせようじゃないか。
祠廟(しびょう)があるのは「185 Cách Mạng Tháng Tám, Phường 6, Quận 3, Hồ Chí Minh」
Google マップで「Thích Quảng Đức Monument」と検索してもいい。ベトナム戦争証跡博物館や統一会堂といった定番の観光地から徒歩10分程度でこれる場所にある。
お昼過ぎに訪れたが、訪れていた観光客は白人の方が2名。統一会堂にあふれる観光客の数を比べると雲泥の差だ。
それもそのはず。
基本的には「何もない」。
なーんにもない。
それでも来る価値はある。
ティック・クアン・ドック師を模した像と、焼身自殺したときの様子を描いたレリーフがあるだけ。あとは、地元の人や観光客の方がたいた線香。
でもそれでいいのだ。目的は彼の像の前で手を合わせること。
像の周りにはたくさんの花があり、とても綺麗に保たれていた。おそらく地元の方達によって管理されているのだろう。すぐ横を大量のバイクが走っているにもかかわらず、何かこの場所は静けさすら感じる場所だった。
線香台があるのは知らなかったが、すぐ近くに火の灯ったロウソクと線香がおいてある。「線香をたてていってください」という意味だろう。
僕も線香をたてて、手を合わせた。
「ついで」でもいい。あなたもベトナムの歴史で尊い人がいたことを感じてみて欲しい。